漆の語源

「うるしる(潤汁)」,「ぬるしる(塗汁)」、「麗し(うるわし)」とも「潤し(うるおし)」ともいわれています。

古来の人々にとって、漆には特別な力があるとされ魔除けとして重宝されてきました。触ると酷くかぶれることから、邪悪なものを寄せ付けない力があると考えられたからでしょう。

修行者たちは、自分自身のミイラを仏像(即身仏)とするとき、身体の防腐作用として予めタンパク質含有量の少ない木の実のみを食したり、「入定」(死して即身仏となること)の直前に、漆を飲んだといいます。

漆のかぶれ

漆にさわるとかぶれることがありますが、これはウルシオールによるアレルギー反応です。このアレルギーを持つ人は、漆の木の近くを通っただけでもかぶれることがあります。

ウルシ科のマンゴーも、人によってはかぶれる事があります。かぶれの程度や症状は、人によってさまざまですが、掻いたり刺激することで、酷い場合には全身にまで広がることもあります。

漆器でかぶれることはまれですが、それは作られて間もない場合に、重合され残ったウルシオールが揮発するためで、十分に重合が進んで乾燥が終わっていれば、かぶれることはありません。

漆の歴史

日本では縄文時代から漆が利用され、土器の接着や装飾、また木製品やくしなどの装身具に塗ったものが出土されました。

2000年に、北海道函館市の垣ノ島B遺跡で実施された調査では、漆塗りの副葬品が発掘され、約9000年前に作られたものであったことが明らかになりました。

これが現存する最古の漆塗り製品とされています。

弥生時代の遺跡からは漆製品の出土は少なく、塗装技術は縄文段階と比べて簡略化されたものが多くなり、さらに、武器への漆塗装が見られるようになります。

古墳時代になると、皮革製品や鉄などへの加工も行われるようになり、漆塗りの棺(漆棺)の存在も見られるようになります。

冬に見られる漆の実
冬に見られる漆の実

養生掻きと殺し掻き

樹液の採取方法は,漆の木の幹に傷をつけ,滲み出してくる樹液をヘラで掻き取ります。これを「うるし掻き」と呼びます。
6月から11月頃までを「うるし掻き」の時期とし、時期によって採取されたうるし液の呼び名やその品質も異なります。
6月中旬から7月中旬までは「初辺(はつへん)うるし」,

7月下旬から8月下旬は「盛辺(さかりへん)うるし」または「盛物(さかりもの)」,

9月上旬から下旬は「遅辺(おそへん)うるし」または「末辺(すえへん)うるし」

その後は「裏目(うらめ)うるし」「止めうるし」「枝うるし」と呼ばれます。

このうち光沢と透明度がもっともよい「盛辺うるし」が、最上級品とされています。

うるし掻きは2通りの方法があり、一年で樹幹の全体に傷を付け,採りきってしまったあと萌芽更新のため伐採する「殺掻き(ころしがき)法」と,数年に渡って採り続ける「養生掻き(ようじょうがき)法」とがあります。
国内ではほとんど「殺掻き法」で採取しています。(当方では養生掻きを行っています)
 漆一本あたりの樹液産出量は,成木(8~13年 周囲約30センチ)で年間わずか200グラム程度です。

漆の木は、樹液を採取できるまでに8~13年の生育期間がかかりますので,天然の漆液は非常に貴重なものとなるのです。そのため、国産漆は国宝級の寺社仏閣に使われる以外には、ほとんどが中国産でまかなっています。